有能な旅人
By Sfulda of Minoc (ミノックのスフルダ)
それは私がユーの宿屋「Wayside Inn」のプレイルームでたまたま若者と出会った時のことだった。彼は少年期を過ごしたジェロームを飛び出し、富を築くための冒険を始めたばかりであることを熱心に私に話してくれた。
実り多き旅を経てきた私にとって、リスクはあるにせよ、彼の決意を認めざるを得なかった。しかし、彼は選んだ冒険のための準備にぬかりはないのだろうか。「準備はできているのか?」私は彼に訊ねた。彼は熟練度と勇気がその冒険に見合うものであることを私に証明しようと、微笑んで新しい剣を抜いてみせた。
「素晴らしい剣だ。」私はそう告げた。「必ず遭遇することになる危険にも十分な備えを持っているらしいな。」しかし、それは私が求めていた答えではなかった。言い方を変えてもう一度訊ねてみる。「旅に必要な食料やその他の物資はもう揃っているか?そしてどんな技能で収入を得ようとしているのだ?」
彼はひどく当惑しているように見え、再び剣をかざして見せた。彼の言葉を借りれば、修行と冒険により富を築こうとしている。剣による技能を高めて名声と富の両方を手に入れることはできるかも知れない、しかし、剣の道を極めるならば戦士としての道を歩むことを私は勧めたかった。彼は笑ってそれを否定すると、制約の多い戦士の生活では求める精神を磨くことが出来ない、そして孤独な旅こそが自分の命を支えるのだと説明した。
私は彼を置き去りにしてしまったが、同じような若者はこれまでに数多く目にしてきた。そして、そのほとんどは警告に耳を貸すこともなく悲しい結果に終わることが多いのだ。旅人の人生は危険に満ちあふれている。旅の道は無情であり、援助を必要とする者に差し出される手はあまりにも少ない。多大な危険とリスクのなかで努力を重ねたもののみが、ごく普通の家庭にはどこにでもある暖かい食事と安心して眠れる場所を得ることができる、---それが旅人の人生なのである。
私は旅人が荒野でそして道々で出会うであろう危険にきっと役立つ、様々なスキルとその有用性をここに本としてまとめた。どのような男性でも女性でも、ここにリストしたスキルの全てをマス夕ーすることは不可能である。第一に、1つの事より幾つかのことを、幾つかの事よりより多くのことを知る者がより栄えるだろう。第二に、少しでも知るほうが全く無知であるより良いのは確かなのだが、色々なことを広く知る者より一つのスキルを徹底的にマス夕ーする者のほうがより栄えることであろう。
いずれにせよ、人生の旅を続ける人々にこの本を見てもらい,多くの先駆者達が滅びていった道で成功するためには、彼らの持って生まれた才能がどれだけ秀でたものかということだけではなく、どれだけ幅広いものかということがどれほど重要かを自ら見てもらおうではないか。