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スカラブレイ
ケリック(Kerick)へ
ついに君が数年を過ごしたスカラブレイを訪れることができた。街は君の話してくれた頃からあまり変わらず開放的な雰囲気に溢れ、店や学校そして家々が石畳の道でつながれている。沖合からの風は甘く、そして冷たい。周囲の丘は雨に濡れて緑に輝いている。
スカラブレイが造船の街として栄えていることは知っていたが、精神的な修練を積める場所であることはまったく知らなかった。魔法使いは心と精神の集中に焦点を合わせ、理解と疎通がこの島の魔法の最終目的であるように思われる。
その正当性については自信はないが、市民の一般的な哲学は尊敬に値する。彼等は根元的な清潔さを何よりも大切にし評価し、それは屋外で数週間の生活を終えた私がゲートへ足を踏み入れた時に実感することが出来た。普段、私はどちらかといえば清潔な方だと思っているが、スカラブレイでは自分を乞食と思わざるを得なかった。唯一、道を歩き始めた私の後ろにだけ泥の足跡が残されていた。私はそれから必死に鎧を磨いたが、二日経っても小川の沈泥のような臭いは消えることがなかった。そして、スカラブレイには卵の殻を溶かせる石鹸があることを発見した。
彼等の哲学ではさらに余暇を音楽と芸術に過ごすことを奨励し、彼等の知性と感情を奮わせることのできる全てのものに敬意を払う。私もこれに習い、宿屋や市場で、そして鍛冶屋で馬の蹄鉄を履かせている間に詩集を読んでみることにした。
彼等は熟練した船大工であるが、同時に常に海賊の被害に悩まされている。ブリテインの海兵は大陸へ向かう船を守ることはするが、外海に出る船に対しては無警戒であり、当然ながらこれらの船は海賊の餌食となってしまう。スカラブレイの島内は安全であり、その哲学に見せられたかなりの数の森林隊などが街を訪れている。
特筆すべきことは身体を装飾することは嫌われており、それを知らずに立ち入った人々も時間と共に耳飾りを外したり入れ墨を隠すことになることだ。彼等によれば魂の宿る「殻」である人間の身体は魂と同様に尊重されるべきであると言う。私にはよく分からないが、亡霊や幽霊などの殻を持たない者達をどのように考えるのか、次に訪れることがあれば是非聞いてみたいと思っている。
君の親友
ギャレス(Garreth)より
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