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ジェローム
ケリック(Kerick)へ
君の予想通り、ジェロームは私が数日間の休息を取った際に最初に訪れた街だ。これまで私は船に乗った経験がなかったが、多くの旅人を苦しめる船酔いには掛からなかったことを報告しておこう。Valerian島への旅は思ったよりも距離が短かかったが楽しむことができた。
ジェロームはトリンシックと共に戦士の訓練に従事している街だが、雰囲気は期待に反して大きく異なっていた。ジェロームの傭兵かつての私がそうであったよりも遙かに自由度がある。いきよいよく酒を飲み、より早く腹を立てる。街の至る所で同じような光景を目にし、そして彼等は決闘に興じる。一方、決闘も迅速に行われどちらかば多少の傷を負えばそれで終結する。このことは私を混乱させたが、無知から決闘により誰かを深く傷つける前にそれが分かってよかったのだろう。
ケリック、しかしこれらの決闘はいわゆる路上の喧嘩と変わらないのだ。勿論、路上で本当の決闘を始めればガードはその解決において比類ない力を持っている。ジェロームでの決闘は友好的な技能の試し合い、あるいは厳密な決闘を切望するかに関わらず、すべてが町の中心部に位置する「Duelling Pit」で行われる。つまり、互いの合意により死に至らしめるまで合法的な戦いを行うことが出来る場所である。
ジェロームの人口は常に流動的であることは疑う余地がない。傭兵は常に戦いの場へ赴いているため永住性は薄い。その日暮らしの人々に囲まれた私は壁に手を当ててため息を付くこともしばしばあった。しかし、地元の彼等戦士たちはジェロームでの訓練が終われば陽気に騒ぎ、そのままワゴンの下の地面で寝てしまう。最低でも天井から雨漏りしないこと、そして床が腐って抜けてしまわぬことは分かっているようだ。
一方で市場の賑わいは、マジンシアの貴婦人を思わせるように魅力的で、多くの店や市場で買い物を楽しむことが出来る。特に武器と防具の豊富さは素晴らしく、また魔法の掛かった武器や鎧、そしてポーションなどが目を惹く。しかし、真の戦士達は魔法の有用性を否定し、すべての魔法関連の商売を近くの小さな島に限定してしまっている。
そして私の興味の全てを奪ってしまったのが馬市場だ。ケリックよ、私は自分の馬が素晴らしいと考えていたが、ジェロームの馬を見た私には平地を耕すこと以外には何にも適していないかに思えたのだ。たとえあの素晴らしい馬を得ることが出来るなら、私はジェロームからミノックの旅すがら全てのエティンを倒して金を貯めるだろう。
ジェロームに特有な事柄のひとつは街が退役士官により牛耳られているということだ。それは都市の政策にも自然となじみ私はくつろいだ気分になれる。実質、次から次に声を掛けられる決闘を除いて、私はこの街が歓迎してくれていると感じることが出来た。無論それは本当の光沢は発しない自己中心的なものなのかも知れないが、私がこの地を去ることを寂しく思ってくれる戦士にも好意を覚える。泥棒の数もトリンシックの比ではないが、「常に背後に気を付けろ」が最も高い美徳と信じられるこの地で何が求められよう?
君の親友
ギャレス(Garreth)より
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