前へ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
次へ
やむを得ぬ連携
- [ワールドニュース] 投稿日:11.23
「そんなことが上手くいくと本気で思っているのかね?」と、アノン(Anon)はブラックソン王(King Blackthorn)の提案を鼻で笑った。
「そうか、あなたの能力では無理だと言うのなら、あなたの評判も『二番目に強い魔法使い』のままだろうな」
テーブルをぴしゃりと平手で叩いたアノンを座ったままデュプレ(Dupre)が睨みつけた。「どうもオレには判らんな……単にその発生源とやらをぶっつぶせばいいんじゃないのか?」
|
騎士と魔女
- [ワールドニュース] 投稿日:11.20
男が振るう刃が反逆の剣士のそれとぶつかり合う。一撃与えるたびに相手は一歩また一歩と退くことを余儀なくされ、男の前進は決して止まることはなかった。デュプレの一撃。剣士は盾で食い止めた。その顔面に強烈に叩き込まれるデュプレの盾。衝撃で相手の鼻が砕けた感触が伝わってきた。だからヘルメットは必要なのさ、若造……剣をひいて戦いをやめ、相手の足を踏みつけてから逃走を許してやったデュプレは、胸のうちでそう思った。突然、背後から強い力で突き飛ばされてデュプレは倒れ込み、埃まみれの砂岩の床に真っ赤な染みを作った。灯台めがけて投げられた爆発薬の爆音が聞こえたが、息を切らして従者が駆け寄って来た時に彼に聞こえていたのは部下の騎士たちの叫び声だった。
|
変人魔術師はモンバットがお好き
- [ワールドニュース] 投稿日:11.13
かつてこの街は今よりも良い場所だった。街はもっと賑やかで、多忙な生活と、マスターやグランドマスターに混じって学び働く魔法使い達であふれかえっていたものだ。しかし、それはもう何年も前のこと、と彼は一人回想した。……血気盛んな者がこの地に残ってはいるが、既に多くの者がより穏やかな領海へ移り住んでいた。ロイヤルガードは今回の訪問に猛反対したが、警護を二人つけることを彼が了承したので最終的にはしぶしぶ折れた。このとき、彼は自分の理解通りにこうも言った。もし目的の人物が見つかり、彼らが頑なな態度を取るのであれば、たとえ一個連隊を引き連れていったところで十分ではあるまい、と。
|
ミナックスの企み
- [ワールドニュース] 投稿日:10.31
女は膨大な魔力をクリスタルに注ぎ込んだ。クリスタルはパチパチと音を発し、その力は女の周囲の地面を揺り動かしはじめた……が、すぐにそれは止み、結局何も起こらなかった。そんなことは女も想定済みだった……単にこのクリスタルがあるだけでは駄目なのだ。何かで焦点を生み出さなければ。そのためには、もっと強力な何かが必要……と、そこまで考えた時、ふいに最高の場所に思い至った。好都合なことに、あの場所なら滅多に人が来ることもない。
邪悪な笑みを浮かべながら、女はシャンティ(Shanty)に手招きした。「ついておいで、シャンティ。もし邪魔者がいたら、お前のやり方で解らせておやり」
|
現れた女
- [ワールドニュース] 投稿日:10.22
がさつな足取りでデンの街中を歩く間、彼の顔を覆うスカーフは、海からのそよ風に吹かれて微かにはためいていた。 こんな稼業についてはいるが、彼はデンを好きになったことは一度もない。ここには、自分の手に負える相手ではないことにも気づけずに誰かにダガーを突きつけたがる連中もいるのだ。あしらうことは容易いが、彼はそんな気分ではなかった。そのオーラが彼の所作から放たれていたのか、酒場に着いて乱暴にドアを押しあけるまで、邪魔者は一人も現れなかった。全員の目がドアに向けられ、酒場の喧騒は突然静まりかえったが、それも一瞬のことで、すぐに全員が元の方向に目を戻した……たった一人、薄汚れた歯を見せて彼にニヤリと笑いかけた男を除いて。
|
ヤバい仕事
- [ワールドニュース] 投稿日:10.17
酒場は多くの客で賑わい、すぐには彼女は見つからなかった。ようやく彼女の姿を認め、男は微笑みを浮かべながら彼女のテーブルに向かい、同席した。「やぁ、待たせたね。こっちはほぼ収穫ナシ……話をしてくれる人がほとんどいないんだ。どうやらパプアを出た船は無し、僕らがあの難破船を見つけた頃は誰もサーペントピラーを使えなかった、ということらしい。それから、こんな不可思議な難破船は、これが初めてじゃないとも聞いた。今まで船が現れなかった所にさえ船団がいるっていうんだ。しかし誰が乗っているのかまでは判らない……僕が助けたあの人もまだ意識を取り戻していないし」片手で髪をかきあげ、イザヤ(Isaiah)は腹立たしげに息を吐いた。「で、君の方は何か判った?」
|
王国の海の魅惑 パート1
- [ワールドニュース] 投稿日:09.05
波は海上を突き進むBSVメナジェリー号の側面に打ち寄せていたが、イザヤ(Isaiah)の目は、行く手に影を落とす前方の嵐に向けられていた。最後にイザベル(Isabelle)に会ってからもう2か月になる。ポケットの中でもてあそんでいる指輪を買うために、彼は賃金の大半をつぎこんだ…だが、この指輪こそ彼女にふさわしいと彼には分っていた。どうしても彼女に渡したかったし、喜んでもらえることもわかっていた。唯一の問題は、前方の嵐の様相だ…見た目通りの酷さならば、あのピラーを使えるのは予定より遅くなってしまうかもしれない。「右舷に竜巻!取り舵いっぱい、帆を張れ!」イザヤの声が、彼が立つ舳先から響き渡った。そしてイザヤは振り返り、安全な方向に船を向けるため、他の乗員たちがきびきびと働く姿を見ていた。
|
覚醒 - 終章
- [ワールドニュース] 投稿日:10.17
ビクター(Victor)は馬車の後部で伸びをしながら大きなあくびをした。嵐は夜のうちにおさまったようだ。スカラブレイ(Skara Brae)のヒーラーたちから退院許可を得てほんの数週間しか経っていないが、機会にも恵まれ、なんとか別の馬車を購入できていた。悪天候の時は痛むかもしれないとは言われていたのだが、夜間に彼を悩ました微かな痛みは日の出と共に消え去っていた。柔らかな羊毛の毛布から這い出し、馬を繋いでいた縄をほどいて御者席に座り、彼は馬車を走らせ始めた。ゴトゴトと柔らかな音をたてる馬車は、物思いにふける彼だけを乗せてユー(Yew)に向かって走りだしていった。
|
覚醒 - 第八章 第二節
- [ワールドニュース] 投稿日:09.29
自分の城のバルコニーで水面を見渡しながら、ロード・ブラックソン(Lord Blackthorn)は両手の指を顔の前で合わせた。前回この水面を目にし、ゆるやかな流れを楽しみ、味わってから久しい。
|
覚醒 - 第八章
- [ワールドニュース] 投稿日:09.19
力は比類なきものだった。その力が全身に流れるのを感じながら、男は神殿の持つエネルギーで呪文を唱えた。その呪文は、自身の研究とギルフォーン(Gilforn)から学んだ知識より男が編み出したものだ。
|
前へ
次へ