かつては主君の偉大なる城であった廃墟に向かう彼の掌の中で、そのカギはきつく握りしめられていた。城壁は粉々に壊され、焼けた残骸が至るところに散らばっていた。だが、彼は在りし日の城の姿を心に思い浮かべ、目的の場所への道を見い出した。そこへ近づいていくと、黒ずんだ石の山の下に、魔法とカギで厳重に封印された区画があった。主君の城は、常軌を逸した群衆によって破壊され、略奪され、焼き尽くされていたにも関わらず、その区画は誰にも荒されていなかった。少しばかり苦労して、この道化師はカギのかかった扉の上から瓦礫を取り除いた。以前は、この扉の上に美しい装飾が施された絨毯が敷かれていたのだが、あれは今頃どこかの農家の床を飾っているに違いない。カギを手にしたヘクルス(Heckles)が目をやると、カギ穴を取り巻くルーン文字は一瞬明るく輝いたが、魔法のカギが魔法を解除するとその光も消えた。荒っぽい手つきでカギを回すと、錠前がガタガタと音を立てた。ドアを引き開けた男はセラーの暗い深みの中へ降りて行った。男の足音が階段に響く中、主君のワインセラー内にまだ何か潜んでいないか見ようと、彼は暗視薬(a night sight potion)を取り出して少し口に含んだ。