ねずみのシェリー(Sherry the mouse)が玉座の間を横切って慎重に足を進めていくのを、身じろぎもせずに女王のエリートガードが見つめていた。彼らはのどを保護するためのマスクを着用していた。あたりには埃と粉塵がうっすらと漂っているのだから、これは驚くに値しない。しかし城の人々の間ではこういった当たり前の事が、大したことではないと思われているらしい。みんながなんと言おうと、わたしは気にしないわ。あのマスクのどこがあごヒゲに見えるっていうの? それに牙にだって見えないわよ。それにしても、この部屋の散らかりようと言ったら本当にひどいわ。可笑しくなって、思わずほおヒゲがぴくっと動く。人間って、いつもねずみの穴を駄目にしちゃうのよね。