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投稿日:2009年8月18日

デクスター(Dexster)は眉間に皺をよせ、考え続ける。

彼の向かいには偉大な魔術師のスーテック(Sutek)、彼に忠誠を誓いブリタニアから亡命した仲間が座っていた。“亡命”じゃあないな、と彼の脳裏に皮肉が浮かぶ。単に“逃げて”きただけだ。ムーングロウの痛ましい事件の後、スーテックは若き魔術師と怪我をしたよそ者に付きまとい、彼らを隠れさせたのだ。

しかし、何故だ?

スーテックが静かに呻き声を漏らした――彼は何時間も背中を丸めて水晶の前に向かい合っている。瞬きもしないで。何もせず、果てしなく凝視している。デクスターが今置かれている窮状を熟考するには十分すぎる時間が、現在の抵抗勢力に囲まれた彼らの自由について考える時間だけがたっぷりとあった。

「何故か」、という問いの答えは、カスカ(Casca)の使いが彼の下に来た時、明白なものになった。彼は思い出す。違う。彼らは護衛のためなどでは断じてなく、単に、誰かにとっての脅威を消し去るために来たのだった。小さな狭苦しい家で、黒い鎧に身を包んだ彼らに囲まれたことを思い出して、彼は震えた。次々に過去を思い出す。椅子にたたき付けられ、そのまま後ろに倒され、喉元にナイフを突きつけられ、尋問され――

その時、スーテックが彼を外へ連れ出したのだった。その後二人はその時のことを話すことはなかった。

一緒にいる三番目の人物のことを、スーテックはホークウィンド(Hawkwind)と呼んでいた。ホークウィンドは意識がなかった。さらに……デクスターにとって、それは“ホークウィンド”という呼び名をつけてよい存在なのかどうかさえわからなかった。今でこそ人の姿をしているが、裂け目の中でのあの神々しい姿と幻影を見てしまったからには。遠い昔の幻影、白いローブ、燃えるような目、そしてシャドーロード(Shadowlord)へ火柱を解き放った姿は今でもはっきりと思い起こせる。

しかし、少なくとも、今や不滅の存在ではない。彼に忠誠を誓う者により密かに運ばれ、汚れたベッドに枕で支えられ横たえられている瀕死の抜け殻、これが、デクスターが目にした全てだった。

デクスターが球体に振り返ったまさにその時、突然、それがやってきた。球体の中に魔力が流れ込み、すぐに溢れ出してテントが溢れ出る光で包まれる。さざ波をたてる鏡のような液体の底で、光が花咲くように輝く。

その時、スーテックは“見た”。

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