「親方お帰りなさい」
「おう、もう帰ってたか。早かったな」

店に戻ったゴーディ(Gordy)に声がかけられる。
声をかけたのは若い女性。名前はコニー(Connie)。彼女もまたゴーディの弟子の一人だ。
コニーは椅子から立ち上ると、ゴーディの荷物を受け取り店の奥に仕舞ってくる。

「それで回収してきてもらったソレ、中身はどれくらいだ？」
ゴーディが言ったソレとは、先日トリンシックの街に設置された投票箱のこと。
ゴーディはその投票箱を回収してくるよう、コニーに指示を与えていた。
「短い期間だったのにも関わらずこれだけの投票がされています」
応えたコニーは机の上に重ねてあった紙の束を差し出した。

「これくらいの票があれば充分か。それでも集計にはちとかかりそうだがな」
「いえ、集計は今終わりました。集計結果はここにまとめてあります」
「相変わらず仕事が早いな。エリック(Eric)にも見習ってほしいもんだ」
弟子の手際の良さを褒めるゴーディ。椅子を引き腰掛ける。

「ところで、その隅っこに積んである机は……エリックが作ったのか？」
「やはり分かりますか……。いい作りしていますよね……」
「あいつ腕は悪くないってのに……あの性格がなぁ……」
コニーは複雑そうな表情……だがゴーディは敢えて気付かない風を装い集計表に目を通す。

「一番票を集めたのはトリンシックか……。次にブリテイン、続いてデルシアか。なるほど……」
「はい。これで建設場所はトリンシックということになりますね」

一通り確認をしたところでゴーディが腰を上げる。
「この結果を先方に報告に行って来る。この用紙は持って行って良いか？」
「はい。写しはこちらに用意してありますので構いません」
「わかった。後は頼むぞ」
「はい。お気をつけて」

コニーに見送られ店を後にするゴーディ。
ふと見上げた空の向こう、ケンダル山の向こうには入道雲が浮かんでいた。