「今まで不可侵を守り続けてきたではないか！ごくまれに侵入者を追いわが民がかの地へ赴いたとしても、それは侵入者を深追いしたわが民の手落ちであり殺されても仕方のない事。なぜ今になって侵略を企てようというのだ！」

「なぜと言われようともそれが事実ではいたしかたありますまい。あなたに出来るのはあなたの民を守ること、違いますかな？」

「それはそうだが……しかし……」

「何をためらっておられるのですか。あの者たちを操る術を教えようと言うのです。あなたは術を使い先手を打つだけ。そうすればあなたの民も守られ、その上新たな領土も手に入る。まだ奴らが戦力を集結する前に一泡吹かせてやればよいのです」

「うぅむ……」

「お忘れですかな？先のオークとの戦いでは奴らが邪魔立てをしたからこそあなたたちの野望は達成されることはなかった。今こそ奴らに復讐し、それを足がかりにして今度はオークを亡き者としてやればよいのです」

「わかった。おぬしの言うとおりにしてみるとしよう。しかし、おぬしは一体何者だ？おぬしも奴らと同族であろうに、なぜ我々に益をもたらさんとする？」

「長よ、知らないほうが良い事もあります。私はただあなた方を憂いており、そして同じくして奴らに恨みを持つ者という事でよいではありませんか……」