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闇の中へ

投稿日:2007年6月7日

波打つ赤い光が暗闇を押しのける。階段の下に置かれた2基の火桶はゆっくりと瞬き、炭は人工的な色を発している。ブラッドダンジョンとは、よくいったものだ。アベリー(Avery)は痛みを感じていたが、兵士たちも怖じ気づいているように見てとられた。
いや、違う。それは自分の思い違いだ。彼らの目に浮かんでいるのは嫌悪感だ。彼らは苦労の末に、やっとここまでたどり着いた。すでに強烈な死と腐乱した臭気に圧倒され続けていた。
彼の左側で何かが動く気配がした。彼はそちらに顔を向け、視線で斥候をねぎらった。

「隊長」

押し殺した声が言った。アベリーは頷いた。彼は生え抜きの追跡兵2名を送り出していたのだ。全員がそうしていたように、彼らも敵に悟られぬよう、明かりを持たずに闇の中を進んでいった。そのうちの一人はすでに戻り、ダンジョンの深層部に通じる細い縦穴に関する報告を確認していた。人が通るには狭すぎるが、そこを通じて下層の音や声が聞こえてくるという。その声の主こそ、彼らの目指すところであった。

「なにか特別なものは?」

男は口早に報告した。

「はっ。主通路を抜けて角を曲がると、右手に隠し扉があります。ほぼ確実に罠が仕掛けられている模様です」

アベリーは報告を聞きながら兵士の状態を観察した。実際に“フォロワー”どもと対峙することを考えると、兵力を一人でも欠かすことはできない。

「ご苦労。敵の数は?」
「インプが2匹、互いに接近しております。ターゲットの向側にバルロンが1匹、エレメンタルはおりません」

アベリーは兵士の足下に違和感を覚え、わずかな光を頼りに目を細めて見た。彼の靴の上に巻かれた布は、黒く粘つくものでぐっしょりと濡れていた。それが血だとわかる前に、彼の体には戦慄が走った。

“けだし、適称であるな”

アベリーは運を信じる人間ではなかったが、隠し扉の周辺に仕掛けられていた罠は、1時間足らずで解除することができた。彼らの使命は、目標に感づかれずに接近することだったが、この環境下で足跡を隠すことは不可能だ。この世界をうろつく怪物どもでさえ、赤い液体で覆われた滑らかな舗装路を通過するときにはかならず足跡を残している。
彼らは、まさにそうした足跡を追っていた。4組のはっきりとした足跡が、曲がりくねった通路に続いている。彼らが音もなく近づくにつれて、はっきりとは聞き取れないが、歌のような、詩のような、経文のような声が次第に大きくなっていった。

斥候が角の手前で停止した。アベリーは足音を立てぬよう速やかに移動すると、兵士たちもそれに追従した。手でサインが交わされる。長い通路……明るい部屋……3人。アベリーもサインを返す。2列……壁に沿って進入……合図を待て。
今度は、兵士たちも躊躇することなく速やかに移動した。彼らの黒い服が石壁の色に溶け込む。部屋の明かりに幻惑されぬよう、向かい合う兵士を互いに見つめ合っている。やがて、目標の言葉が聞き取れるところまで接近した。

“We are Eored”
“We abitan Geweorc”

アベリーは扉の外で止まるよう兵士たちに合図を出した。部屋の中を覗くと、広いレンガ壁の部屋の中央にテーブルが置かれている。3つの人影。それぞれ目の粗い黒いウールのローブをまとっている。彼らはテーブルを囲んで座り、マントラを唱えている。扉の方向に向いている者はいない。儀式に集中しているようだ。

“Ac Agiefan Idel”
“Frith Naman Mid Lif”

彼は手を挙げた。柄やクランクを握る十数名の兵士の手に力が入る。テーブルの中央には何かが置かれているが、何だかよくわからない。アベリーには細工用道具が散乱しているようにも見えたが、いずれにせよ、すぐにわかることだ。

“To Sculan Na Ilca Eft”

彼は手を下ろした。全員が無言で2列になり、壁に沿って突進した。彼らが扉を通過した瞬間、ローブを着た者たちの手から炎がほとばしった。しかし、突然に始まった呪文の嵐は、突然に終わった。
アベリーは捕まえた女の背中を反らせ、膝を使って足を床に押さえつけると剣を喉に押し当てた。2つのクロスボウが彼女を狙っている。他の2人も、まったく同じ状況となった。

「部屋を封鎖しろ。こいつらを縛って部屋の隅につれていけ」

彼は女を押し出すように立たせると、上着で手をぬぐった。彼らの体はべたべたしていた。実際にそうだったわけではないと彼も気づいていたが、テーブルのところへ歩いていくまでの間に、何度も上着で両手を拭かずにはいられなかった。
道具はやはり細工用道具だった。上等な代物だ。宝石加工用の工具セットもあった。そして、小さな茶色の本の近くに、数片のブラックロックが散乱していた。彼らが見入っていたのは、この本だったのか? 彼は椅子に腰掛け、本のページをめくった。文章は知らない言葉でつづられていたが、いくつかの図と、巻末には名前のリストがあった。彼はそのなかのひとつ、ワンドの図を指で叩き、考えた。

「隊長!」

慌てた様子で兵士に声をかけられ、彼は反射的に本を閉じた。

「隊長! 毒です!」

アベリーはすでに半分のところまで歩いてきていた。そして、ほんの数分前に捕まえた女の前に膝をついた。女は口を開き、舌は紫と黒に変色し、丸まっていた。

「毒だ」

嫌な空気が部屋を満たした。

「死んでいる」

静かな声が響いた。

「我らは無なり。ゆえに無に帰する」

部屋の反対側に立っていた若い兵士に、一斉にクロスボウが向く。アベリーはゆっくりと彼に向き直った。一気に疲れが出た。体が重く感じられ、恐れと怒りが冷たい炎となって腹の底に燃え上がった。
兵士はアベリーが立ち上がる様子を落ち着いて見ていた。彼の手には何かが握られている。ワンドか? 彼は兵士の名前を思い出そうとした。ルナから来た少年兵だ。トリンシックだったか? パラディンの街だ。そんなことはどうでもよい。アベリーと少年の目が合った。

「逃げられんぞ、ブライアン」

彼は本をポケットに押し込んだ。

「あなたもだ」

一時の間があった。さらにもう一時。
兵士のひとりが落ち着かず身じろぎをする。
ブライアンは口を開き、自分の手を凝視した。瞬時にアベリーの目はある物を認識した。

「撃てっ!」

命令の声は、きつく押し込められていたスプリングが一気に戻る音と相まって周囲に反響した。何本ものクロスボウの矢が黒い稲妻のごとく部屋の空気を切り裂くと、ブライアンの体を後方に跳ねとばし、反対側の壁に叩きつけた。確かめるまでもなく、ブライアンがまだ生きていることにアベリーは驚いた。ひとりの兵士が反逆者の体に剣を突き立てたが、それでも彼は震える手でワンドを持ち上げた。

「全員、退却!」

この言葉に素早く反応した兵士たちは出口に殺到したが、なかには躊躇する者もあった。ひとりの兵士は目標に集中するあまり、命令が耳に入らなかった。ブライアンは、剣が体に突き刺さるのを感じながらも、ワンドからエネルギーを放ち、それはテーブルの上のブラックロックを撃った。すると白い閃光とともに、部屋が爆発した。

アベリーと逃げ遅れた兵士たちは、衝撃によって出口から外の通路へと吹き飛ばされた。アベリーは本能的に部下たちの様子を確認した。半数以上は無事だ。先ほどまでの部屋は炎と化し、周囲の壁からは炎の断片が吹き出している。アベリーは、傍らに本が落ちたことに気づき、半分まで燃えているところを手で叩いて消した。左側から右側へ、通路を地響きが伝わってきた。それはやがて彼ら全員を包み込んだ。
ブラックロック。
部屋から炎が噴出した。しかし、彼らはすでに走り出していた。血の滲む苦労を重ねて追ってきた足跡を、今は逆に辿っている。隠し扉までは1分とかからなかった。そしてすぐにダンジョンの上階に駆け上った。噴水からは燃える液体がしたたり落ち、床の割れ目からは炎が吹き出す。赤々と燃えるダンジョンの奥からは猛火の音が轟いてくる。

アベリーは怯えている場合ではなかった。あと少しで目指す階段がある。まもなく追いつくであろう後方の火炎地獄に向けて、前方から淀んだ空気が押し迫る。彼は回覧を駆け上がった。眩しい光に危うく足を踏み外し地獄に転落しそうになった。太陽の下へ転がり出て、入り口の脇に飛び込んだとときには、背中は灼熱、顔は冷気を同時に感じていた。

入り口から火柱が飛び出した。そしてすぐに、轟音を響かせてダンジョンの中に吸い込まれていった。幸いなことに、兵士のほとんどは死に物狂いの力を発揮し、辛くも脱出に成功していた。ようやく一息ついて気がつくと、すでに忠実な弓兵がひとり、仮設キャンプの歩哨に立っていた。
アベリーは山肌のゴツゴツとした岩に背中をもたせかけ、焼けただれた本を開いた。最後のページをめくると、そこには名簿の一部を読み取ることができた。

「エリク、サラ、リチャード、ブライアン」

彼はゆっくりと名前を読み上げた。最後の一人はとくに声に力を込めた。彼らは最初の手がかりに過ぎない。アベリーはパタンと本を閉じ、目をつぶった。
名前。少なくとも名前はわかった。


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