***** よいこのみんな、ありがとう！！ *****

や、やぁ……ピエロのおにいさんだよ。　*ぼろっ……*

シーサーペントくんがあばれちゃって、みんなびっくりしたよね！
テントはボロボロだし、イルカのキャサリンちゃんも、うみににげてしまったんだ。

よいこのみんなは無事だったかい？　無事？　それはよかった！
おにいさんたちサーカス団も、なんとか元気にやっているよ！

シーサーペントくんがいなくなっちゃったから、
新しいなかまを見つけないといけないね。

今度はなにがいいかな？
え、クラーケンがいいって？　うんうん！　さすが、よいこのみんなだね！

よーし、次はクラーケンの水芸だ！　どうだい、ワクワクしちゃうだろう？
それじゃあ、新しいなかまを紹介できるまで、たのしみにまっててね！


【保護者の皆さまへ】

皆さまこんにちは。このたびは本当に申しわけありませんでした。いやはや、まさかあのような大惨事になるとは全くの予想外でした。十分気をつけたはずだったのですが……お詫びの言葉もございません。大切なお子様に怪我がなく、なによりでした。


公演の最終日。タウンクライヤーにチップをはずんだせいか、いつもよりたくさんのお客さまがいらっしゃいました。スカラブレイの皆さまは初めてのサーカスに少々戸惑っておられたようですが、私自らが披露した華麗なイリュージョンで、会場は大いに盛り上がったのでございます。


次は、看板イルカのキャサリンの出番です。この子はとても優秀で、人語を解するだけでなく算数もできる大変頭のよいイルカです。キャサリンは見事に問題を解き、最高のパフォーマンスを披露してくれました。


さぁさぁ、皆さんお待ちかね！　シーサーペントの出番となりました！
実はこの日少々餌が足りなかったのですが……はい、懐がさびしく、買い与えることができなかったのです。しかし、それも公演が終わるまでの辛抱。お客様からの「おひねり」が入ったあとに、たっぷり生肉を振舞うつもりでした。いえ、これは本当です。

シーサーペントの火の輪くぐりが佳境に入ったそのとき、期待が恐怖に変わりました。あろうことか、シーサーペントは私たちに炎を吐きかけてきたのです！　炎はテントに燃え移り、一瞬にしてあたりは火の海と化しました。おお、私のテントが壊されてゆく！　私の唯一の財産が。
幸いなことに、観客の皆さまがシーサーペントを鎮めてくださいました。おそらく、凄腕の冒険者がいたのでしょう。その戦いぶりは、様々な芸を見慣れたこの私ですら見とれてしまうほど鮮やかなものでした。

しかし、大変なことがもうひとつ起こってしまいました！　我がサーカスの看板イルカ、キャサリンが海に逃げ出してしまったのです！　一体どこへ行ってしまったのでしょう。あれほどまでに愛情をこめて育てたというのに……。


*ふぅ……*
ちょっと餌を減らした程度で暴れるとは、計算外でした。飼いならしたといっても、シーサーペントはシーサーペント。所詮はケダモノということでしょうか。
キャサリンは逃げ出し、テントも燃えてしまいましたが、いいえ、この程度でくじけるジャック・サーカスではございません。私たちはこれからも巡業を続けてまいります。
いつかどこかで、またお目にかかれますように。