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よみがえる息吹

投稿日:2005年6月8日



その老ヒーラーは、ぼろぼろの帽子を取り、大樹を見上げた。
小さな輝きをまたたかせた大樹を、ぼんやりとした光が覆っていた。
そして、皺だらけの手のひらを大樹にそっと押し付けた。

手のひらを通じて、吸い込んだ空気をとおして、語りかけてくる意志。
暖かで、心安らぐ不思議な感覚に、彼は目を閉じた。

「お前さんは知っているのかね…? 今度は何が起ころうとしているのか…」




「いらっしゃい、ロルフさん!」

酒場に現れた老ヒーラーを見て、カウンターの中の主人が声をかけた。

「おや、何やら大荷物じゃねえですかい。遠出でもしなさるんで?」

「よっこらせ…ふうー。ああ〜、少し調べたいことがあってのう。しばらく帰れなくなりそうじゃわい。」

「あんまり無理しねえでくだせえよ。もうお歳なんだし、心配でしょうがねえや。」

主人は、マグカップになみなみとワインを注ぎ、老人に差し出した。

「ふぉふぉふぉ。老いぼれには老いぼれなりの、知恵の深さで何とかなるものよ。」

彼はワインをぐいっとあおりつぶやいた。

「あれから、ここのワインもすっかり味が落ちてしもうた…。昔はワインと言えばユーと言われたものじゃったのにのう。」

「まったくですよ。ワイン目当てにここへ来る客も、めっきり減っちまって。」

主人はため息まじりに愚痴をこぼした。

「もうここが、元の緑豊かな森に戻ることはないんですかねえ…」

「…ふぉっふぉ。実は、そのことなんじゃがの」

老人は、帽子の下の目を子供のように輝かせた。

「戻るかもしれんぞ。わしはまさに、これからその原因を調べに行くところじゃ。」

「えっ…?」

主人は、手にしたワインの瓶を落としそうになりながら、目を丸くした。

「何が起きたのかは知らん。ただ、感じるのじゃよ。大樹の息吹をな…」

「もう、病気や妙なモンスターに怯えることもなくなるってことですかい!」

「そうじゃのう〜。次にここに来る時には、ワインは昔のようにそれはうまくなっておるかもしれんのう。」

老人は顔にいっそうしわを作って、ニヤリと笑った。

「そりゃあいいや!おい、お前!こっちに来てロルフじいさんの話を聞いてみろよ!」

主人はたいそう喜んだ様子で、厨房にいる妻を呼びに行った。



「あれ…? ロルフじいさん?」

つまみ代わりの料理の皿を持ち、主人が老人の席へ戻ってきたときには、もうその姿はなかった。

「もう行っちまったのか…年甲斐もないじいさんだな。本当に子供みたいだよ。」

飲みかけのカップの横に無造作に置かれたコインを拾い上げながら、彼は苦笑いした。

「戻ってきたら、どうせまた一晩中旅の話をするに違いない。じいさん用にひと樽、ワインを取っておかないとな。」

そう言うと、主人はまた厨房へ戻っていった。

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