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ファイアスティード

投稿日:2002年7月18日

Anwyn Brenna
全シャード
ロード・オークス(Lord Oaks)は、私がヘイブンの無垢な若者達との生活へ入っていく為に、イルシェナーの森を離れてから、私を訪れる事が何度かあった。しかし、今回の彼の用向きは、かつて無い程の興味を掻き立てるものであった。彼はユニコーンをさらい、この世界の奥深い場所へと連れ去るデーモンの噂を聞いたというのだ。そこでは、それらのデーモンがユニコーンの角を切断し、熱と炎に曝し、そしてそれらを無感情にし、その血に火を注ぎ込んでいると言うのだ。そこで作り出されるのは、世界がかつて目にした事の無い生物であった。ファイアスティードである。

私はその連れ去られた獣を追い、ファイアダンジョンまで向かった。恐らく、過去にはそれらは多く存在したのだろうが、私に確認できたのは2頭だけであった。それらを捕らえたデーモンはどこにも見当たらなかったが、それらが近くにいるに違いなかった。間近にそれらを見ようと、私は注意深くその黄金の輝きを放つ馬に向かって近づいていった。近づくにつれて、それらの目に何かが映し出されているのに気が付いた。火の苦しみはその生物を狂気へと駆り立てていたのだが、それらはかつての知性を保持していたのだ。ユニコーンだった頃の尊厳が、これらの炎の生物達のどこかにあったのだ。今では荒々しく、他の事など省みない生物と成り果てていた。そして、私の調教スキルを以ってしてさえ、それらを制御できるか、私には見当がつかなかった。

しかしながら、私は数週間前に2本のスクロールをロード・オークスから受け取っていた。それは、私が以前までマスターしたと思っていた調教と動物学の更なる習得を可能にするという物であった。それ以来、そのスクロールを使いこなすべく、実に様々な動物に対してスキルを働きかけたが、今ほど私の新しい能力をテストする絶好の好機はあり得なかった。攻撃の兆候の動きを窺いつつ、私はファイアスティードに最接近した。ファイアスティードはすぐさまこちらへと振り向いて、火を噴き、私を酷くその火で苦しませた。その時点で、私にはこれが、私の調教の能力の試練のみならず、同時に、生き残りへの試練である事も分っていた。

少なくとも1時間、私は自身を頻繁に治癒しつつ、また、1回以上退却も考えながら、その獣と格闘した。そしてついに、彼は私に彼に優しく話し掛けるのに十分な位置にまで近づく事を許した。私は彼と同じくらい獰猛な生物を静めた言葉を囁いた。数分後、彼に触れてもいい位にまで近づく事を許してくれた。調教されたファイアスティードは驚くほど聡明で、私の命令に機敏に反応した。彼は私の強力な盟友となるだろう。その事から、彼をブレイズ(Blaze)と名付けた。

私はブレイズに跨り、2頭目のスティードの調教に取り掛かった。2頭同時に命令できるかは分らなかったが、最初と同じ位の注意を以って2頭目に近づいた。ブレイズを調教する時に多くを学んだとはいえ、この暴れ馬を調教する事はやはり同じ位に難しかった。再び、自分自身とブレイズとを治癒しながら、格闘は1時間近くに及んだ。が、ついに、私はその生物を調教する事が出来た。同時に2頭のファイアスティードを操る事は可能であった。ロード・オークスはこの知らせに非常な興味を示す事だろう。私はこの二頭目をインフェルノ(Inferno)と命名してついて来させた。ロード・オークスは直に彼らを見たがる事だろう。

丁度我々がファイアダンジョンの出口に差しかかった時、こちらに向かってくるデーモンの足音が聞こえてきた。そしてそれは、我々の行く道を塞いでいるのだと分かった。私はブレイズから降りて、そのデーモンを視界に捉えるまで待機した。それを視界に捉えてすぐに、ブレイズとインフェルノの両方にキル命令を出した。個別に其々のスティードと闘ったので、どういう闘い方をするのかは大体想像が出来た。だが、私は驚かされた。ブレイズとインフェルノは共同して勇猛果敢に、かつて彼らが受けた責め苦を越えるダメージを与えながらデーモンに立ち向った。私は他の動物でこの種の集団本能を見かけた事はあるが、ユニコーンや馬では初めて見る、とても興味深い光景だった。

同時に印象深かったのは、彼ら自身は呪文を発しないにも関らず、ブレイズとインフェルノの両方ともデーモンのぶつけてくる呪文に対する異常なまでに高い耐性を持っているように思われた事だ。そこで気が付いたのだが、インフェルノの持っている耐久力は、人間で言うとフルプレート装備に相当していた。一方で、ブレイズのそれはリングメイルに近いものがあった。この違いから、私はインフェルノより、ブレイズの方をより多く治癒した。しかし、それは本当に僅かな治癒を施すだけであったのだが。しかし、私の獣医学のスキルも、そのデーモンが毒殺の魔法をブレイズに放った時には、殆ど使い物にならなくなっていた。私の関心は完全にブレイズに奪われた。私がブレイズに気を取られている間に、インフェルノが最後の一撃をデーモンに向けて放った。そしてデーモンの体は地に沈んでいった。安心した私は、ブレイズへの介抱を素早く終わらせて再び跨った。そしてまたインフェルノを付き従えた。

森の支配者(Lord of the Forest)のいるイルシェナーへ向かおうとムーンゲートに向かっている時に、私が見つけ出したものについて改めて考えてみた。ファイアスティード、美しく、同時に凶暴なその存在は、彼らを調教できる者にとって頼りがいのある盟友になる事だろう。ロード・オークスはこの知らせを聞いて驚く事だろう。何と言っても、私は証拠も携えているのだから。ファイアダンジョンにはもっと多くのファイアスティードがいると思うが、また次の機会の為に残しておこうと思う。

「この広大な世界は何とも不思議な物を持っているものだ」

-Anwyn Brenna
Dryad of Haven
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