全シャード
ムーンゲートをくぐると、そこに異国の風―。

これまで見たことのない様式の建物と、人々のエキゾチックなコスチューム、咲き乱れる桜の花。
岩や砂を組み合わせて作られた庭には水が流れ、池にそそいでいる。
大自然の景観を表現しているのだろうか、とても美しい。

侍と忍者が住むというこの街、「禅都」の景色は、筆者の好奇心をかき立てた。

さて、財布の中身を充実させてから、「スシ」なる食べ物でも食べてみるかと銀行に立ち寄ると、
なにやら不可思議な術を使って、自分と同じ姿のコピーを作り出す冒険者を見かけた。
驚いてたずねると、なるほど、これが「忍術」なのだそうだ。

冒険者は私に、その秘術の数々が記された本を見せてくれた。
この街の書写家から買ったものらしい。
私はそれを興味深く見せてもらった。

もうひとつ、冒険者は新しいものを見せてくれた。
「武士道」を学ぶことで身につく、侍の技の構えであった。
ブリタニアに古くからある剣技との技比べを、この先見ることができるのだと思うとわくわくする。

忍術も武士道も、それぞれこの街の忍者や侍が教えてくれるのだという。
風まかせでふらりとやってくる冒険者たちに、古くから伝わるであろう技をすぐに教えてくれるとは。
もっとも、ブリタニアと同じように、それなりの礼は支払わなければならないが。

冒険者に別れを告げ、私は銀行の北へ向かってみた。
そして、「すてき手芸店」という大きな店のそばに咲いている桜の木の下に、珍しい石碑を見つけた。

これが、この街に名前が付けられたときの記念碑のようだ。
どこかに記念樹とともに建てられていると聞いて、もっと大きなものだと思っていたが、急いで通り過ぎれば見逃してしまうくらいつつましいものであった。
それもこの街の文化なのだろうか。
美しい詩とともに（「短歌」というのだそうだ）、名付け親となった二人の名前が刻まれていた。

私はそれから何時間も、首が痛くなるほどきょろきょろと見回しながらこの街を散策した。
明日は街の外へもでかけてみよう、そう思いながら宿をとった。