モンデイン(Mondain)は1000年に渡って不死の珠玉(Gem of Immortality)を支配し、ソーサリア(Sosaria)を思いのままに操ってきた。この支配は、遙か彼方よりやってきた見知らぬ男によってモンデインが打ち倒され、不死の珠玉が粉々にうち砕かれたことで幕を閉じた。これはこの世界に住む我々にとっては暗黒期が終結した最初の時代であったのだが、イルシェナー(Ilshenar)では事は終わっていなかった...。その話を進める前に、まずは我々が知る限りのシャード(shard)とファセット(facet)について話しておかねばならないだろう。
では、イルシェナー(Ilshenar)とは最近発見された新しいファセットなのだろうか? この地を最初に訪れた勇気ある人物が、地図といくつかの文献を携えて帰還している。連日してさらなる情報が我々の元に寄せられ、この神秘なる新たな土地の謎は徐々に解かれようとしている。私は寄せ集めた文書類を纏め、イルシェナーの歴史を追いかけようとした。そう、モンデインの支配が終わってから、つい近年までの間に何が起こったのか。イルシェナーの民は、一度に二つの言語を話すことがたびたびあるため、この作業は困難を極めた。学者に拠れば、第一言語は我々がよく知り、使用している言語と共通しているもので、第二言語はまったく異なるものだという。第二言語の中には、我々が魔法を詠唱するときに用いる力の言葉(words of power)に酷似したものが多く含まれている。簡単な例を、ウィスプ(Wisp)の文献の中で見つけることができた。彼らの言語では、Wispの表現に用いられる言葉は "Orlor"。これは我々の世界の "Ort Lor"にもよく似ていて、 "魔法の光"(Magic Light)と翻訳することができる。実際、魔法や神秘的学問で用いられる言語の大部分は、それぞれ微妙に異なる方言で用いられることが多い。力の言葉の起源に関する議論は、これまでにも長い間行われてきているが、イルシェナーにはその答えを導く何かが見つかるのかも知れない。もしかすると、イルシェナーの人々は我々よりも多くの魔法を知っているのかもしれない。そう考えるようになったが、ここで話を戻して、先に進めるとしよう。
粉砕
モンデインの支配期に立ち戻ってみるとしよう。彼は、その見知らぬ男によって最期の時を迎えるまでは、誰の手も及ぶことのないソーサリアの支配者だった。この話は小さな子供たちでさえ知っているもので、且つこの時代から、つい最近の混乱期を越え、発見と学識、そして平和の現在に至るまでがよく知られている。しかし、イルシェナーは我々のこの幸せな運命を共有することはなかった。モンデインが打ち倒された日は「粉砕(Shattering)」として知られている。『〜それは死と災害により汚された日なのだ。その日、全てが正しい方向に進まず、全てが破滅していた。世界の全てが変わってしまった。』これはイルシェナーで発見された文献 "残されしもの"(All That Remains) の中の一節である。この時点では、私はまだこの話が事実であるのか、それとも創作されたものであるのかは自信が持てない。しかし、次の箇所から何が起こったのかが非常によくわかる。私がまだ発見していない何かが伝わってくるようである。