Allan, Apprentice
全シャード
「ああ痛い、もう少し優しく手当てを出来ないのかい !」

ああ、漂ってきた漂ってきた、この鼻をつく刺激臭。
こりゃスライムか、最後までついてないなアボット (Abbot) の奴。
趣味悪いよ、いくら頭に来たからって自分の弟子をあんな姿にしてさ。
あーあ、そろそろ俺の番かな。
これがこの世で書く最後の日記になるかもしれないなあ。


「人の研究を横取りしくさって ! 」

「昔っからそういう女だったよ、澄ました顔して洗いざらいさらってくんだ」

「ちょっとお前、人の話を聞いてるのかい !」


思えばろくな事が無かった。
あのグリゼルダ (Grizelda) 婆さんについて来て良い目にあったことなんてあったっけ。
昨日のなんかとくに酷かったよな、なあロルフ (Rolf)。・・・ロルフ・・・ ?
あ、また漂ってきた、これはニワトリだな。さようならいい匂いのロルフ。

しっかしこんなに怒った婆さんは初めてだ。
よっぽど昨日のがこたえたんだな。
無理ないか。婆さん、魔法勝負で負けたことなんて今まで無かったもんなあ。
んー爽快だ、いい気味だ、普段さんざん役立たず呼ばわりしてさ。

「むしゃくしゃするねえ !」

「アランや、ちょっとおいで」

誰だうるさいな、今大事な日記を書いてるんだ。ほっといてくれ。
あの女魔導師強かったなあ、肌なんかぴちぴちでさ。
こう言っちゃなんだけど、婆さんなんかが勝てる相手じゃなかったね。色々と。
むきになっちゃって、何が盗まれたんだか知らないけど放っておきゃいいのに。

「アラン、アランや ! 何度呼びゃ分かるんだい ! 」

「そうかい、お前もあたしを怒らせたいんだね !」