MMA Press 特派員：ディオーネ(Dionne)
Sakura
ここはMMA学生棟保健室。
1人の女子生徒が先日から寝込んでいる。
そこへ誰かが学食から運んできたふんわりと優しい匂いのするスープをベッドの横に置いた。
その気配に気づくウェンディ（Wendy）。「・・・・・・ラル・・・君・・・？」
小さな声で呼びかけた相手はラルフ（Ralph）ではなく、新聞部のディオーネ（Dionne）であった。
「きつい時にごめんね。お見舞いに来たの。これ、学食のおふくろさんから」ディオーネはそう言うとウェンディのそばに歩み寄った。
「少しは良くなった？」
「・・・大変な時なのに・・・情けないよね、ははっ・・・」と力なく笑うウェンディ。
「今は元気になることだけを考えてよ、ね？」ディオーネは静かにこう続けた。
「そう・・・大変な時であれなんだけど・・・新しい新聞できたから。元気になったら読んでね」
「ありがとう。・・・後で読ませてもらうわ」そういうとウェンディはまた静かに目を閉じた。
これ以上無理をさせるのもいけないだろうと、ディオーネはスープの横に新聞を置き、静かに保健室を去ったのであった。




＜＜＜　MMA Press No.3509　＞＞＞

■新たな可能性を求めて・・・■

我らが学園マジンシアマジカルアカデミー（Magincia Magical Academy:MMA）で大事件が発生したのはもう周知のこととなってしまいました！そして封印の方法の一つが絶たれてしまったことも・・・。
そんな中でも連日行われる理事会の中で、一つ有力な解決の糸口になりそうな案が出てきたらしいわ。
そこで今回は、私、ディオーネは変身の魔法で受講生の中に潜入して情報を入手することにしたわ！
シーマス（Seamus）学園長は、事件の発端になった男子生徒（R君）と女子生徒（Wさん）を呼び出し新たな調べ物をするように指示を出したそうなんだけど・・・そこではあまり詳しいことはわからなかったわ。
ただ、我がMMAの前身となった魔術師の集団の中の一人に関する事を調べれば、何らかの成果が得られそうみたい。
でもその人物を調べるにはマジンシアにある大富豪の旧家を調べなければならないらしくって、その許可が下りるまでは身動きがとれなくなってしまったっていうの。無事に許可が下りればいいんだけど・・・。

■どうなっちゃうの？！アルフォンスさま■

調べ物が終わったR君とWさんはそれぞれマジンシアの街でそれぞれ離れて過ごしていたらしいのだけどWさんのいた場所に、アルフォンス（Alphonse）さまの体を支配した魔物が現れたらしいの！！
一瞬緊張が走ったけど、そこでは何も起こらずに「我が命の拠りしろのある最深部へくるがよい」と言い残して去っていったって話よ。勿論R君とWさん、そして受講生達はそれから推理して導き出されたダンジョン、デスパイスの最深部へ急いだわ。案の定そこにはアルフォンスさまの体を支配した魔物が待っていたわけよ！
魔物はアルフォンスさまから抜け出て、激しい戦闘を繰り広げたんだけどまた体の中に戻ってしまったわ。
しかしもう逃がすわけにはいかないわ！そう言ってR君とWさん、そして受講生でアルフォンスさまに入った魔物を囲んだんだけど・・・なんと！Wさんに襲い掛かったのだからもう大変！！しかしWさんから不思議な光が煌き出してアルフォンスさまの体を支配した魔物の動きを封じたみたいなの。それでもさらに襲い掛かろうとしたところをぎりぎりのところでR君が突き飛ばしたからよかったものの、あのまま襲われていたら・・・想像するだけでも恐ろしいわ。
その場にぐったり倒れたWさん。相当危険な状態だったみたいで、R君が抱きかかえて保健室に連れてきて現在は安静にしているといったところだけど・・・大丈夫かしら？

MMA Pressでは更に取材をし、情報が入り次第皆さんに詳細をお伝えします。




しばらくして目を覚ましたウェンディ。だが相変わらず全身の力は抜け、気だるい時間をぼんやりと過ごしていた。
毛布をすっぽり被って考えるのは今までの事件のこと、ラルフのこと、そして・・・。
「なんで素直に言ってあげなかったかな・・・」色々思い出すと悲しくなって涙が頬を伝っていく。
「このままケンカしたままお別れなんて・・・・・・嫌だよ・・・」
保健室に静かに響くすすり泣きは、いつまでも、いつまでも続いたのであった。