アトランコ：「あら、このワイン、けっこうイケるわぁ」
メグ：「あのう……アトランコ先生？」
アトランコ：「どうしたのメグちゃん。もしかして、このワインが欲しいのかしら？」
メグ：「いえ、そうじゃなくてですね。その……」


メグ：「私たち、ここでなにしてるんでしょうか……」
アトランコ：「なにって、メグちゃんが『アトランコ先生！　一緒にシェイムダンジョンへ行きましょうよっ！』って言うから、来たんじゃない」
メグ：「そうなんですけど、なんでここにテーブルとワインがあるんでしょうか」
アトランコ：「ダンジョン前って、どうしたって殺伐とした空気になりやすいじゃない？　だから、アタシがこうして“くつろぎセット”を持ってきてあげたってわけ。これで少しは、リラックスできるでしょ？　ウフフ」
メグ：「なるほど。いや、その、中には入らないんですか？　ダンジョンの」
アトランコ：「入るわけないじゃない。危ないもの」
メグ：「えっ！？　だって、ダンジョン内の様子を取材しに来たんですよ？」
アトランコ：「それならそうと、はじめに言ってくれなきゃダメじゃない。今日は天気もいいし、てっきりアタシは散歩に誘われたんだと思ってたわ」
メグ：「わざわざ、こんな場所まで散歩に来ないですよ〜」
アトランコ：「あら、この子ったら、ここを“こんな場所”呼ばわりしちゃってるわ。シェイムダンジョン前の景色を愛してる人たちに謝りなさい！」
メグ：「うっ、ごめんなさい」
アトランコ：「はい、よくできました。それで、なんの話だったかしら」
メグ：「このところ、このシェイムダンジョン内で、新しい精霊が目撃されているという情報がありまして、多くの冒険者で賑わっているそうなんです」
アトランコ：「ふ〜ん、精霊ねぇ。アタシは別に興味ないし、メグちゃんだけ行ってらっしゃいよ。ワインでも呑みながら待ってるわ」
メグ：「ええ！？　でも、精霊だけじゃなくて、今まで見たことのないような指輪やブレスレットなんかも見つかっているって話ですよ！！　その辺はアトランコ先生も見過ごせないんじゃないですか！！」
アトランコ：「いやよ〜、だって襲われたりしたら大変じゃない。なにかあっても、メグちゃんだけじゃ心もとないし、アタシはここで待ってるわ」
メグ：「わ、私も、一人で中に入るのはちょっと怖いんですけど……」
アトランコ：「なによ〜、だったら早くそう言えばいいじゃない。仕方のない子ねぇ」
メグ：「えっ、じゃあ、一緒に入ってくれるんですか？」
アトランコ：「違うわよ。今日はもう中に入るのは諦めて、ここで一緒にのんびりしましょってこと」
メグ：「で、でも、取材が……」
アトランコ：「アタシたちだけで入って、怪我でもしたらどうするの？　ダンジョン内へは、マークがいるときにでも入りましょ。せめて盾役くらいいないと、いざってときに困るじゃない」
メグ：「たしかに」
アトランコ：「そういうわけだから、今日はここでゆっくりワインを楽しみましょ。ほら、メグちゃんも」
メグ：「そうですねっ。それじゃ、お言葉に甘えていただきますっ！」



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