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ローカルニュース

胸騒ぎ

投稿日:2011年1月19日

(Wakoku, Mizuho, Mugenシャードローカル)

月日は流れ、アザイリア(Azilea the witch)とエリオット(Elliott the sorcerer)は、あの事件の嫌な記憶から少しずつ解放されつつあった。

「アザイリア、修業はこの辺りで一区切りにして、そろそろ昼食にしないか?」

「はあ? なにいってんのよ、お師匠。さっき食べたばっかじゃない!」

「もちろんそれは分かっているんだけど、どうにもお腹が空いてしまってね。これ以上、修業に付き合えそうもないよ」

「どうしたらそんなに早くお腹が空くのよ! 信じられないわ……」

「はは……」

「まったく。それじゃあ、街で材料を買ってくるから、ちょっと待ってて」

「ありがとう。いつも悪いね」

「そう思うなら、すぐ空っぽになるそのお腹をなんとかしてほしいもんだわ」

不満をもらしながらも、街へ買い出しに向かうアザイリアの足取りは軽かった。あれ以来、フリモント(Fremont the sorcerer)は姿を見せず、心配事といえば自分の師匠の食欲くらいのもので、彼女は思う存分魔法の修業に打ち込むことができていたからだ。しかし、そんな平和で充実した日々に暗い影が忍び寄る。

アザイリアは鼻歌まじりに買い物をすませ、満足気な笑みを浮かべながら街を出ようと出口に差し掛かったところで、背後から自分へ向けられた視線に気が付き足を止めた。彼女は振り返り、視線の主がかつてエリオットの師匠であった男であると分かるや否や、敵意をむき出しにその男を睨みつけた。アザイリアの敵意を感じ取り、男は嬉しそうに笑った。

「ほっほっほ、そう怖い顔をせんでもいいではないか。久しぶりじゃな、アザイリアといったか、エリオットは元気にしとるか?」

「あんたには関係ないでしょ。それよりなんの用よ」

「ほう、これはずいぶんとせっかちな娘じゃ。お主の師匠、あれは相当なのんびり屋じゃったが、なるほど、お主も苦労させられとるようじゃな」

「ふんっ、用がないなら行くわ」

「ふむ、今日はお主に見せたいものがあってな。ついてきてくれるかの」

「いやよ、アタシは忙しいの。他の人をあたってちょうだい。それじゃ」

「まあ、そう焦らずともよいではないか……ほれっ」

フリモントが腕を振り上げた直後、アザイリアの意識は一瞬遠のき、次の瞬間彼女は見覚えのない部屋へ転送されていた。そこは明りが少ないためか視界が非常にわるく、空気が薄いのかアザイリアは息苦しさを感じた。注意深く辺りを観察すると、目の前にフリモントではない誰かがいることに気が付き、それと同時に彼女の全身は一瞬にして震えあがった。

「どうじゃ? ワシの新しいペットは。かわいい寝顔をしとるじゃろ」

「うっ……」

「目を覚ますまでには、まだ少し時間がかかるんじゃが、早くこいつを見せたくての。さすがのワシも、ちいとばかり召喚には手こずったが、うまくいったわい」

「……」

「ほっほっほ、恐ろしくて声も出せんか。まあいい、帰ったらエリオットにも伝えるんじゃぞ。見たかったら歓迎するから、いつでも遊びに来いとな」

そして先ほどと同様、フリモントが腕を振り上げると、次の瞬間アザイリアは街に戻っていた。アザイリアは、すぐにでもエリオットにこの事を報告しなくてはと思ったが、家へ向かうその足取りは重かった。



「……なるほど。それはちょっとばかり危険だね。あの人は色々と無茶をする人だから、なんとかしなくちゃいけないなあ」

「なんとかって、あんな化物……」

「でも、眠っているんだろ? だったら今がチャンスじゃないかな。とにかく、一度あの人と話をしてみるよ。あ、アザイリアはここで留守番だよ。お前が来ると話がややこしくなるからね」

「なっ!? 失礼ね! それに一人じゃ危ないわよっ」

「ふふ、大丈夫さ。それじゃ」

過去にあの二人の間になにがあったのかアザイリアは知らなかったが、とにかく嫌な予感がした。このまま家でじっとしていたら、取り返しのつかないことになってしまうのではないかと。そして、アザイリアは師匠の言いつけをあっさりと破り、エリオットの後を追いフリモントの元へ向かうことを決めた。

「でも、今のアタシが一人で行っても……」

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