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反撃の時

投稿日:2001年7月6日


全シャード
退屈さにJogugが小石が蹴ると地面を転がり岩壁を打った。彼はこの場所がたまらなく嫌いだったのだ。殴っていい人間はおらず、腹を満たすものもなく、そしてオークの常識で考えても洞窟の臭気はきつかった。怒りに悪態をつくと、周りのオークに不平を漏らしたが、彼らもまた自分達の不満に精一杯で聞く耳は持っていなかった。

この洞窟はオークボンバーによって掘り出されたもので(実際には爆破されて)、その後でオークチョッパーが補強作業を担当して出来上がっていた。勿論、オークの常識内でそれはかなり上質に仕上げられていたが、中に待機しているオークにとっては、そんな仕上げのことよりも自分達の疲労こそが問題視されるべきことだったのだ。オークが外界の自然の美しさに気を止めることはほとんどないに等しいのだが、Jogugはコーブに近い自分の住処、陽の暖かさと開放感を懐かしんでいた。Jogugは決してオークで一番の勇猛さを持つとは言えなかったが、身を隠すような洞窟の窮屈さには耐え切れない思いだった。そして、上官のSorgulgも同じであった。

Sorgulgが声を上げると、Jogugは悪態をつくのを止めた。

『ちがう!』オークロードは叫んだ。『これ以上、かくれているのはいやだ!』

この声に続いてオークメイジのOpathuが声を上げた。Jugugにはそれが何だったのか正確には聞き取れなかったが、洞窟内の秩序のためのSorgulgの意見には賛同していないのは確かだった。大好きな爆音を聞かせてくれるオークボンバーを除いての話になるが、そもそも彼は斧を振り回さないオークは信用しない性質なのだ。

『なら、おまえをおいてウチにかえる。好きなだけモンバットみたいに、かくれていればいい。』Sorgulgはそう告げながら自分での声に高揚していた。

Jogugは、この険悪な2人のロードとメイジの間に何が起きるかを容易に予測することできたし、Sorgulgからの攻撃を避けようと、Opathuが声を発してしゃがみこんだとしても驚くことはないだろう。事実、Opathuが助けを求めて大声を上げ始めると、Jogugは笑顔さえ浮かべていた。

そのとき、地面がわずかに揺れた。Jogugは何が近づいてきたのかを悟り、その顔からは微笑みが消えて行った。彼は少なからず勇気を振り絞ると戦闘態勢をとった。ふたたび地面が揺れると、図体が大きく凶暴そうなオークが目の前に現れた。ゆうにJogugの二倍はあるだろうその身体には筋肉が隆々と息づき、Sorgulgとメイジが言い争っていた場所にずっしりと立っていた。Jogugは自分が震えているにも関わらず、相手を制するように恐怖を隠して突っ立っている。

巨大なオークは悪魔的な微笑を見せ、Jogugをつまみ上げると別のオーク達の一群へ投げつけた。その性格なのだろうか、目の間に入るオークを投げ飛ばすことを明らかに喜んでいた。そのことだけが巨大なオークの力を見せつける方法ではなかったが、投げつけられた「モノ」に対して、オークたちが慌てている様を見るのは楽しいと感じていた。巨人が次の不運なオークを捕まえようと周りを見回したとき、Sorgulgは堂々と地面に降ろされた二本の足の間を交わして一目散に逃げ出した。

Jogugはこれ以上投げられることも、洞窟に残りたいと思う気持ちもあるはずはなく、Sorgulgに続いて洞窟から逃げ出した。彼はペイントを塗りたくった人間を殴る計画も嫌いではなかったが、もっと大切なことは自分達の「家」を取り戻すことだった。

『これ以上、かくれているのはいやだ…』頭の中にロードの言葉が繰り返され、彼はオークの悲鳴が聞こえる暗い洞窟の奥を見据えた。

『殴るときがきたんだ!』



コーブに残った男女を宿屋に集めると、ダンカンは皆が静まるのを待った。人々は戦闘に疲れた顔で腰掛け、彼は皆の注意を集めるまでにしばらくの時間を掛けなければならなかった。その中で1人、ダンカンはこれから話そうとする突拍子もない提案に多少なりともほくそ笑んでいた。部屋の中が静かになり、すべての目と耳がダンカンへと向けられていた。

わずか数ヶ月前に冒険を始めたばかりの若きパラディンは、自分はいつからこの絶望的な住民達のリーダーとなってしまったのだろう?そう考えていたとき皆の顔が自分に向けられていることに気付いた。軽く咳払いをして喉を鳴らすと、彼は注意深く話を始めた。

『友人達よ、我々は数週間に渡ってオークによる嵐のような襲撃と戦ってきました。そして今、私達の故郷はサベージ族による脅威にさらされています。オークにしても、サベージ族にしても、彼らは戦いを止めるつもりはないでしょう。コーブが完全に滅びてしまう前に、我々がこの戦いを終わらせなければなりません…。そう、運命は我々が握っているのです。』

パラディンはしばらく間をおくと、反応を見ようと住民達の表情を伺った。彼らの目はダンカンにしっかりと向けられ、何かの確信が彼の言葉に隠されていると思っているのだろうか、真剣に話を聞く姿勢でいるようだった。

『機は熟したのです。今こそ自分達の故郷を守るため、オークたちのために戦おうではないですか。これを使って!』彼は緑のオークマスクを頭上に掲げて話を続けた。『サベージ族を撃退し、この土地を昔の状態に戻すのです。』

このとき、街の老人が席から飛び上がってダンカンを睨みつけた。『オークのためじゃと?気でも狂ったか!?我々は何世代にも渡りオークたちの攻撃に耐えてきたのだぞ。それならば、よほどサベージどもを助けることの方が理にかなっておる!奴らは最低でも人間じゃ…理屈で物事を考えてみろ。』

ダンカンはこの反応を予測していた。彼はコーブの住民に深く根付くオークへの憎悪は十分すぎるほど分かっていたのだ。しかし、サベージに対しても交渉など効くはずがないことも理解していた。サベージ族は知能が高く、悪辣でオークよりも優れた装備を持っている。また噂では、奴らは珍しい生き物にまたがって行動し、敵に向かって空からの雷撃を落とす魔術も持っているらしい。これらの噂が事実ならば、オークの邪悪さは見劣りすることになる。ダンカンが答えを示す前に老人が言葉を続けた。

『パラディンよ、我々はすでに行動を決めている。我々はペイントを体に塗って、サベージ族に紛れ込むつもりじゃ。恐らくは気付かれることなく、オークを全滅させることができるだろう。』そう言い放つと老人は部屋を後にしたが、部屋の中にいた約半数の住民も老人を追いかけるように出て行ってしまった。

ダンカンは、この瞬間がサベージとオークのどちらと共に生きるかを決める重要な決断の時であることを知り、彼らが部屋を去るのをゆっくりと見守った。どちらの道を歩んでもそれは平坦ではないだろう、しかし彼は、部屋に残った反サベージを心に決めた人達とその運命を歩まなければならない。住民を見据えると、ダンカンは彼の計画を説明し始めた。サベージとの戦いを望むものには緑のオークマスクを配り、それ以外の住民には残って街を防御することを支持した。

ついに、街への侵略者達を追い返す最後の時がきたのだ…。

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